参議院選挙はネット選挙解禁という側面からも注目を集めました。その結果についてはさまざまな媒体で紹介され、みなさまも目にしたことかと思います。ここでは、候補者のWeb上でのコミュニケーションについて、そこから学び取ることができるポイントをいくつか例を挙げながら考えていきます。
継続性
今回はネット選挙解禁ということもあって、選挙活動開始に合わせてSNSアカウントを開設した候補者が多く出てきました。しかし、そのほとんどがファン集めに苦労し、ときには疑問視されるような手法を使うケースも見られました。これらは「拡散」のツールとして期待したが、思ったように成果が得られなかったことが原因かと思います。
通常の人間関係と同じで、デジタル領域においてもユーザーと関係性を築くことは、時間を要するケースが多くなります。そういった手順を省いてユーザーに近づいても、効果はありません。
選挙のときだけでなく、普段からSNSを活用している議員の方々は、投票者との距離を図りながら、うまく情報を発信することができたように思います。「必要なとき」にユーザーから良い反応をもらい、情報を拡散するためには、日ごろの行いがやはり大事だということです。これは企業にもあてはまるのではないでしょうか。自社の商品を売り込むときばかり甘い言葉を使っても、ユーザーはなかなか振り向いてはくれません。
透明性
たとえば自民党の金子善次郎元衆院議員は、今回Twitterフォロワーの多くが海外国籍ではないかと指摘されて、選挙終了後はあえなく閉鎖となりました。街頭演説もTwitterですぐに内容が拡散され、立会演説も各地の様子をネット上で閲覧することができます。このように、これまでは街を練り歩いた時間だけが選挙となりましたが、今後は24時間すべてにおいて投票者とつながることになりました。
これは企業とユーザーの関係にもそのまま当てはまります。これまでは営業時間など企業の都合で関係性が構築されていましたが、SNSという24時間オープンなアカウントでは主導権はユーザーになります。ユーザーの生活やタイミングが時間軸の中心となり、企業はそれに寄り添うように様々な活動やアプローチを設計する必要があります。
ユーザーが主役となる状況でも、企業は悲観的になる必要はありません。今までと違い、ユーザーの動きに適切に合わせることができれば、競合他社との比較において差別化を図ることができます。ニーズにしっかりと応えていくことができれば、ロイヤルティを高めることにもつながるでしょう。
鏡に映し出される”自分”
こうやって考えると「ネット選挙」によって状況がガラリと変わったようで、実際には求められる部分はそれほど変わってはいないのでしょうか。24時間365日、相手と向き合っていき、誠実な対応を続ける。投票者(ユーザー)との対話を重ね、想いをカタチにしたり、政策の必要性を訴えかけたりすることは基本とも言えます。もちろんネット上でそれが増幅されることはありますが、コアとなる部分がなければ何も始まりません。
ネット上で可視化されることによって、そういった態度や姿勢がより鮮明になる部分はあると思います。もちろんツールをうまく使って、今回だけは成功することができた、という方もいると思います。しかし、企業とユーザーの関係と一緒で、それは一過性では意味がありません。自らの姿がネット上では色濃く反映されることを意識して、ネットに限らない活動全体の見直しを考えたほうが良いのかもしれませんね。